「あの人がいないと困る」は、褒め言葉だと思っていた。
「来月、金曜日にお休みをいただいてもいいですか」
「もちろん。いつも助かってるし、ゆっくり休んで」
そこまでは、なんの問題もない会話だった。
「ただ、あの請求の件だけ、前日までにお願いできる?」
「あと、何かあったら電話しても大丈夫?」
そう付け足したところで、休みを申し出た人が、手帳を開き直す。
休んでほしい気持ちは、嘘ではない。
でも、あの人しか知らないことがある。それも、一つや二つではない。
取引先によって少し違う請求書の送り方。担当者がつかまらないときの連絡先。毎月、誰かに言われる前に補充されている備品。
どれも、仕事の一覧にすると短い。
けれど、その短い一行のまわりには、何年もかけて覚えたことがある。
何も起きないように、先に気づいている。
誰かが迷う前に、必要なものを用意している。
だから、周りからは見えにくい。
いつも無事に終わるので、難しい仕事だとも思われにくい。
「あの人がいないと困る」
頼りにしているからこそ出る言葉だ。
言われたほうも、うれしいと思うことはあるだろう。自分の仕事が、この会社の役に立っている。その実感に支えられる日もある。
ただ、うれしい言葉をもらった同じ人が、休みの予定を入れるときには少し迷っているかもしれない。
自分がいない日に、誰かが困らないだろうか。
戻ったら、仕事が積み上がっていないだろうか。
結局、出かけた先でもスマートフォンを見てしまうのではないか。
そんなことまで考えてからでないと休めないなら、「頼りにしている」の伝え方を、少し変えてみてもいい。
まずは、普段何を気にかけてくれているのかを知りたい。
その人が自分では「たいしたことじゃない」と思っている工夫も、聞いてみたい。
知っていることを分けてもらっても、その人の価値が薄まるわけではない。むしろ、これまで見えていなかった仕事の丁寧さに、初めて気づくこともあるはずだ。
「休みの間は、こちらでやっておきます」
そう言える人が一人増えたら、「いつもありがとう」も、今までより少し安心して受け取ってもらえる気がする。
YRでは、こうした一人に集まっている仕事を一緒に見直すところからお手伝いします。話してもらった工夫をもとに、AIで手順のたたき台をつくり、実際に使えるかは担当する人と確かめていく。「あの人に安心して休んでほしい」という相談からでも、大丈夫です。
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