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任せること

「自分でやったほうが早い」の、そのあとで。

社員から届いた提案書を開く。大筋は合っている。でも、お客さんが最初に知りたいのは、たぶんそこじゃない。説明の順番も、少し気になる。

「ここを直してもらって……」

と返事を書きかけて、手が止まる。伝える文章を考えているうちに、自分で直せそうな気がしてくる。

「ありがとう。あとはこっちでやっておくね」

責める言葉は、どこにもない。むしろ、忙しい相手を気づかう気持ちさえある。提案書は無事に仕上がり、お客さんにも間に合った。今日の仕事としては、それでよかったのだと思う。

ただ、来月もまた、同じところで手が止まるかもしれない。

任せたい気持ちはある。もっと力をつけてほしいとも思っている。けれど、目の前の締切は待ってくれない。教えるために少し遠回りをする、その少しが、どうしても取れない日がある。

社長が仕事を引き取るたびに、社員がほっとすることもあるだろう。その一方で、「どこが足りなかったんだろう」と、完成した資料を見比べている人もいるかもしれない。

直された箇所はわかる。でも、そう直した理由までは、資料に残っていない。

たとえば、金額のページを前に移したのは、このお客さんが予算を気にしていたから。言い切る表現をやわらげたのは、まだ約束できない部分があったから。

社長には自然に浮かぶ理由も、初めて担当する人には、まだ見えていないことがある。

「自分でやったほうが早い」は、きっと本当だ。その早さは、これまで何度も迷って、失敗して、考えてきた時間の上にある。

だからこそ、出来上がったものだけを渡すのは、少しもったいない気がする。仕事を引き取ったあとにでも、「ここはね」と理由を話せたら、今日の修正が、次に任せるための材料になる。

任せるという言葉には、手を離すような響きがある。でも実際には、しばらく隣で同じものを見る時間も、含まれていていいのだと思う。

毎回、丁寧に教える余裕がない。そんな忙しさも含めて、YRに話してみてください。AIで下書きや修正理由を整理することも交えながら、社長の頭の中にある判断を、次の担当者にどう渡せるか、一緒に考えていけたらと思います。

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