「AIに聞けばわかるよ」のひと言で、聞けなくなること。
入社したばかりの人が、先輩の席のそばで少し立ち止まる。画面に向かう背中が忙しそうで、声をかけるタイミングがつかめない。ようやく聞けたのに、「それ、AIに聞けばわかるよ」と返されたら。次の質問は、飲み込んでしまいそうだ。
言った側に、冷たくしたつもりはないのだと思う。自分もAIに助けてもらっているし、待つより早いと考えたのだろう。言葉の意味や一般的な作業なら、何度でも気兼ねなく聞ける。新人にとって、心強い道具になる場面もある。
ただ、仕事でわからないことには、検索しただけでは埋まらない部分がある。この書類は誰に渡すのか。いつもはどこまで確認してから提出するのか。急いでいるとき、この人に直接連絡してよいのか。会社の中では当たり前でも、入ったばかりの人には見えないことだ。
AIが答えを出してくれても、それが自分の職場に合うのかは、まだ判断できない。もっともらしい文章を読んで、かえって「これで合っているはず」と思い込んでしまうこともある。最後に誰かへ確かめたいのに、もう一度聞くのは悪い気がする。その遠慮が、余計に仕事を難しくする。
新人が聞きたかったのは、答えだけではないのだろう。「この程度のことを聞いても大丈夫ですか」という、小さな確認も含まれている。そこで受け止めてもらえた経験は、後で困ったときや、失敗に気づいたときの声のかけやすさにつながる。
もちろん、教える側にも仕事がある。同じ説明を何度もする大変さもわかるし、いつでも手を止められるわけではない。だからAIを使うなら、質問を遠ざける言葉ではなく、話を続けるための道具にしたい。
「言葉の意味はAIでも調べられるよ。うちの進め方は、あとで一緒に確認しよう」。たとえば、そんな伝え方なら、相手は調べながら待てる。今すぐ答えられなくても、どこから先は人に聞いてよいのかがわかれば、置き去りにされた感じは薄くなる。
AIに聞けることが増えても、職場で人に聞いてよいことまで減らさなくていい。自分で調べる力と、周りを頼る力は、どちらも仕事を覚える助けになる。
YRでは、新しい道具を入れることだけでなく、教える人と教わる人の困りごとから、AIの使いどころを一緒に考えます。新人への説明が負担になっている、でも質問しにくい職場にはしたくない。そんな悩みも、お聞かせください。
初回相談無料・目安30分
